第34章 タイムリミットはあと5分。
「あーあ…見られちゃった」
「てめぇ…わざとだろ」
「ふふ…早く行かないとあの子、可哀想よ?」
「チッ…面倒くせぇな…!」
街が静かな事にそういえばもう結構遅い時間なんだと知る。
開いているお店は飲み屋くらいでその淡い灯りをぼんやり見ながらふらふらと街を歩く。
ふと肌に感じた冷たさ。
うわ、最悪…
雨が降ってきた。
それは次第に強くなりバケツをひっくり返したような激しい雨に。
「ひやー!ヤバイ…っ!」
ロータリーの大きな木が目に入って急いでそこへ駆け込む。
生い茂る落葉樹の下なら雨粒をいくらか避けれた。
すると丁度良い所にベンチもあって。
僅かに濡れるそこへゆっくりと腰掛けた。
「はぁ……」
頭が痛い。
なんで、どうして。
さっき目の当たりにした光景が何度も脳内でフラッシュバックする。
考えても分からなくて。
ただ二人がキスしていたというのは明らかな事実で。
ローは…抵抗していなかった。
やっぱりジュリアさんはローの事が好きなんだ。
なら…ローは?
「………」
そんな事ないって自信持って言えないや。
ふと好きってその言葉を聞きたかった時上手くはぐらかされてしまった事を思い出す。
目を瞑る。
頬に伝うのが雨なのか涙なのかわからない。
「ローの馬鹿…最低」
何だか悲劇のヒロインになった様だ。
雨にずぶ濡れでシチュエーションは完璧じゃないか。
確か最後は…
ハッピーエンドだったっけ?
「やっと見つけた」
「……っ!」
「ビブルカードでも持たせようか。また勝手に居なくなられても困る」
「…探してなんて頼んでない」
背中で受ける声がだんだん近づいて来て、私は俯いたまま彼へ返事をする。
「何しに来たの」
「来ちゃ悪いか?」
「別に」
横に感じた温もり。
ローが隣に座った。