第34章 タイムリミットはあと5分。
目的の島へ到着したのはペンギンの読み通り夜も深くなる頃だった。
その足で向かった酒場へ着けばジュリアさんのクルー達が既に居座っていて私達はそこへ合流した。
「あー!ローさんお久しぶりっす!」
「やべぇエリナさん超美人…っ!」
「連れてきたわよ〜エリナちゃん」
ローの隣へごく自然に座ったジュリアさん。
私はローとは少し離れた席へ座った。
「紹介するわ、こっちがレオで、こっちがミカゲ。二人ともエリナちゃんのファンなのよ。あと向こうにいるのが…」
ジュリアさんが紹介するクルーの人たち。
一見強面だが皆笑顔が気さくで良い人そうだ。
「ふふ、はじめまして。素敵なキャプテンを持って羨ましいですね皆さん」
含みを持たせた笑顔でローを見れば鋭い眼光が返ってきた。
「悪かったな」
そうは言うものの昔からの馴染みの顔ぶれにローの表情はどこか明るく楽しそうだった。
「まぁまぁ、じゃあ改めてまして、乾杯!」
誰かの一声に皆のジョッキは高々に空でぶつかった。
それから暫く時間が過ぎるのに、いくら飲んでも酔わないエリナは、理由は分かっていた。
少し離れた席で座るローとその隣へ座るジュリアさんの空気。
その二人が醸し出す雰囲気はとても自然で二人共何だかリラックスしている気がする。
お似合いだな…
あんな柔らかいローの顔…あんまり見ないし。
一方エリナの表情は固かった。
別につまらない訳ではない。
皆でワイワイガヤガヤ飲む席は好きだし、みんなの息抜きにもなる。
なんだけど。
二人が視界に入る度、心がチクチクする。
ローの笑った表情が嫌でも目に入る。
それは私へではなくてジュリアさんへ。
そりゃあ昔からの付き合いだし同じく医者であり互いに一船のキャプテンであると共通点も多いし話が弾むのは分かる。
だけど何か勝手に疎外感、孤立感を感じてしまう。
“私ローの事諦めてないから”
醜く悪戯な思考が頭を支配する。
よっぽど怖い顔をしていたのか、シャチが声をかけてきた。