第33章 私、ローの事諦めてないから。
「紹介が遅れたわね、私はジュリア。ローとは昔同じ船に乗ってたの、貴方が魔女のエリナちゃんでしょ?」
「ええ、そうです」
「貴女に一度会ってみたかったわ、ローの事宜しくね?」
「あ、はぁ…」
「ジュリア、で、何の用だ?」
その会話を遮るように口を挟んだロー。
「何の用って、たまたま近くに寄ったから遊びに来ただけよ」
鈴のように肩を揺らして笑う彼女は私より一回り程上の年齢に見えるのに少女のように無邪気で可憐に笑うから私はつい見惚れてしまった。
「好きにしてくれていいが、ジュリア船はどうした?」
困ったような呆れたような表情のロー。
「仲間とは近くの島で合流する予定よ、ロー達も行くでしょ?」
「行くと言うか…連れてけと言ってるよな」
「あは、バレた?」
含みを持たせた表情でローへ微笑むジュリア。
「まぁ構わねぇが…」
「いぇーい、やった。本も借りたかったのよ。エリナちゃん、ちょっとロー借りるわよ?」
「え?あ、はい」
ふた返事で返せば、ローとジュリアは談笑しながら船内へ消えた。
え?何だ。
何なの。
エリナは去る二人の背中をただ突っ立って見送る事しか出来なかった。
甲板に残された二人を除くクルー達。
きょとんとするエリナへペンギンが口を開いた。
「ああ…エリナ、ジュリアは前キャプテンと同じ船に乗っていたんだ」
「うん、聞いた」
「こうやって気が向くと遊びに来るんだよジュリアは」
「へぇ、どうやって来たの?あの人」
「ジュリアは悪魔の実の能力者で鎖を自在に操る。橋でも作って歩いてきたんだろ」
なるほど、だから船なんてないのね。
雰囲気こそ柔らかく笑顔なんてとても無邪気な印象だったが、纏う空気からかなりの強者だとは睨んでいた。
やはり能力者だったのか。
「昔から、ああいう仲なの?」
エリナが何を言いたいのか察したペンギンは少し目線が泳いだ後、告げた。
「ああ、そうだな。ジュリアは結構男勝りでサバサバしている。姉御肌なタイプだな」
「そうなんだ…」
本当は二人は昔、恋仲だった。
ペンギンは口が裂けても言えやしなかった。