第5章 生物学上も女です
「話は終わった。戻れ」
そう言われてもあまりの衝撃にすぐ動ける人はいなかった。
壁の穴を修繕するシャチも手が止まっている。
「皆さん、これから約一週間よろしくお願いします!」
そんな事は露知らず、エリナは満面の笑みだ。
ローに案内され船長室へ入ると、8畳程の部屋を本が独占している状態に驚いた。
「ローって昔からストイックだったけど、これ全部読むなんて凄いわね」
ベットサイドのテーブルに積み上げられたり棚を飾る分厚い本の山々。
図書室で寝てるの?
そんな感想だった。
「……悪いか。言っておくが俺の辞書には睡眠という語源がない」
「ああ…そう」
そんな自慢されても…
だからそんなに隈が出来て不健康そうな顔なのよ。
帽子を壁にかけ、ベットに寝転ぶローを目線で追う。
いやいやちょっと待て!
「ねぇ私どこで寝るの?」
気付かぬ内に本と睨めっこしているローに向かって問えば、鼻につく渇いた笑いが返ってきた。
「そこじゃ何が不服だ」
顎でさされるそことは殺風景なこの部屋には似つかない質の良さそうな二人掛け程のソファ。
「客人として扱うつもりだったんでしょうローくん?」
「黙れ。クルー達の大部屋に放り込まれないだけ感謝しろ」
はいはい、そうですか。
ええまぁそこは感謝しますけど。
どかっとソファに腰掛け、思った以上に心地よい感触に意外とよく寝れるかも。なんて考える。
疲れたな…。
横になったら一気に疲労と眠気が襲ってきて。
と思ったら顔に何かが降りかかってきて気持ちの良い瞬間を妨害される。
確認すると、毛布だった。