第5章 生物学上も女です
トンテンカンテン
トンテンカンテン
小気味いい音と共にシャチは壁に空いた穴を船長に命令され修繕していた。
(……これくらいで済んで良かったぜ。キャプテンあれはもう殺人的勢いだったもんな…)
壁に空いた派手な穴を見てはこれくらいで済んで良かったとシャチは安堵するのだった。
当の本人は今は落ち着いたのか腕を組み普段と変わらない表情。
「じゃあえっと…次の島までの一週間、一緒に船に乗らせてもらうって事で…いいんでしょうか?」
先程の事態に少し反省したのか、エリナは控えめに腰は低く訊ねる。
「ああ…そのつもりで乗せた。客人として扱ってやる」
「わーいエリナが来て楽しみだよ!」
「ふふ、ありがとうベポ。私も白熊との旅なんて初めてだから楽しみだわ」
もうエリナとベポは親しくなっているようだ。
「船内の案内と紹介は明日にしろ。ペンギン、とりあえずお前らの部屋へ連れてけ」
「えっ、…でもあそこは…」
「なんだ。ああ…安心しろ、こいつは生物学上は女だが、全くもってかけ離れている」
「失礼ね!…まぁ私はそのへんの床とか通路で寝るから大丈夫よ」
ペンギンが狼狽えた理由はすぐ分かった。
お前らと言うくらいなんだから皆が雑魚寝する大所帯の男部屋なんだろう。
私は気にならないが、クルー達の精神衛生上悪い。
「ダメだよキャプテン!女の子床でなんか寝かせちゃ。それに雨に打たれたし風邪でも引いたら…」
「この船に客室はない」
「ここは?」
「だめだ。医務室は俺のテリトリー。勝手な出入りは禁止だ」
「…じゃあ後個室って言ったら?」
目が合ったペンギンは気まずそうに答える。
「キャプテンの部屋だけど…」
ちら、と周りはローを見るも、本人は見事な忘却無人っぷり。
「ああ、じゃあそこでいいわ」
「はぁ⁉ふざけんな」
静止に入るローに対しエリナは唇を尖らせて突っぱねる。
「何よどうせ私なんか女の対象の内に入らないんでしょ?じゃあいいじゃない」
「ハッ…そうか分かった面白れぇじゃねぇか。いいぞ、なら俺の部屋で過ごせ」
予想外の展開に周りは驚きを隠せない。
あれだけ他人を自室に入れる事を拒否する人間なのに。