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医者と魔女

第28章 え、そう?喋る熊よりマシじゃない?





「滅多に入らないのになんでこんなに埃たまるんだろ」


確かにそこは人の出入りは少なく誰も用がない部屋だった。
あえて挙げるのなら愛用品である日曜大工の資材や工具を置いているシャチくらいだろう。
だがあのシャチが小まめに掃除を気にかけるなんて事は思えず。
今頃ベポと釣りでもしているだろう。

俺もやりたかったな〜

羨ましがるペンギンは何かを発見したらしいエリナのその声に気怠そうに首を動かした。

「なんだよネズミでもいたか?」
「違うわよ、見てこれ何?」
「ん?」

エリナの手には埃を被った金色のランプがあった。
ペンギンは酷く昔の記憶を思い出す。

「あ〜それ、そういや昔釣りしててシャチが釣ったんだよ。金だし価値があるかもしれないと思ってとってあったんだ」
「ふーん…」

すっかり埃を被って、くすんではいるが磨けば光沢を取り戻し美しいその色を放つであろうランプ。

「可哀想に…せっかくだし磨いてあげるか」

エリナはハタキを手放し綺麗なタオルで磨いてやった。

「ほら!こんなにピカピカになったよ」
「お〜!そんなに綺麗だったっけ」

覗き込んだペンギンの顔が映るくらいランプはその姿を見違えさせた。
満足したエリナは今度は埃を被らないように棚の中へしまった。

「よーし、さ、ちゃちゃっと終らせるわよ」

気合いを入れ直したエリナにペンギンはまだやるのかと気を落とすが、始めたからには手を進めないと終らない。
重い腰つきで再びモップを動かした。

「ん…?なんか言ったペンギン?」
「へ?口に出てた⁉」
「は?何が?」
「あ、いや…何も言ってねぇよ!」
「そう…」

首を傾げるエリナを前にペンギンは一瞬心の愚痴が聞こえたのかとエリナの耳を恐れたが彼女が聞こえていたものは別らしい。
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