第11章 改
「うちから出るな」
玄関で釘を刺され、そして重たい扉が閉まった。
お見送りが終わって、冷たい床にへたりと座り込んだ。
静か過ぎる家が居心地悪い。
廊下にも部屋にもある鏡。
いつもの醜い私が写る。
目がすっかり腫れてしまった。
黒い隈も出ている。
あまり夜は、眠れていない。
あの家は、確かに帰りたくなかった。
でも、それ以上に、心のどこかで、またお母さんが
『二人で暮らそう』
って言ってくれることに、期待してしまっていた。
それが微塵も叶うことはなかったのだけど。
息が、また止まる。
もう何も期待しないようにしなきゃと。
諦めることも、考えないといけない。
それが、どんなにツラくても。