第12章 痕
「日本でも大会だったんですか!?」
「だから早めに帰って来た」
私の為じゃなかったのか、という寂しさが急に襲う。
(何自惚れてんだろ……所詮、私じゃん……)
近くのガラスにうつる自分を見る。
情けない。
醜い痣に可愛いげのない表情。
気紛れで抱いてくれてるって、いい加減に自覚しなきゃ…。
「なんだ?また落ち込むのか?」
「落ち込んでません…」
着替え終わった千鶴さんに会うとまた落ち込んでしまうだろう。
要さんの荷物を運び終えたところで、私はその場を離れて客席についた。
相変わらず拍手喝采で出てきたお二人をうっとりと眺める。
横にいる富士田くんもうっとりしている。
「あれ、要さん…」
ふと、そのあまりにも透けてる異常な衣装に目がいった。
「なっ、なっ!?」
「どうしたの?ちゃ…」
「み、みないで!!!」
「!!?」
私は慌てて富士田くんの目を塞ぐ。
後ろにいた兵藤くんと赤城くんまでは、間に合わなかった。
「あー」
「これは派手に」
要さんは楽しそうに、その背中の傷を、ホール中に見せつけた。
しばらく教室には顔を出せない。
要さんとはその日1日、口を聞かなかった。