第10章 葉
「目、腫れてやがる」
「……ぁ」
無意識だったが、公園のトイレで随分と泣いていたらしい。
痛みはないが、違和感はあった。
要さんは、ちょっと待ってくれ、とキッチンに向かいながら言った。
ついでに携帯を取ると、慌てて電話をかける。
氷を出す音が聞こえる。
「……悪ぃ……今日は……」
電話の相手は千鶴さんらしい。
そういえば、邪魔してしまったのを思い出す。
のろのろとベッドから下りて、行ってきて欲しいと伝えたかった。
そのはずなのに、その声すら出なかった。
「……」
無言で横に立ちすくむと、すぐにわかってくれたらしく、頭をタオル越しに撫でてくれる。
「の調子が悪くてな…埋め合わせは…」
「…っ」
すぐ携帯を取り上げようと手を伸ばしたが、あっさりかわされ、撫でていた手で軽く額をつつかれる。
『それじゃあ仕方ないわね…』
千鶴さんのそんな声が聞こえた。
ますます申し訳ないことをしてしまったと身が縮みそうになる。
「ほら」
さっきとはまた違い、雑に仰向けにされると、瞼に冷たい物が当たった。
「冷やしたらマシになんだろ」
「……」
そんなことも知らなかったな、なんて考えた。
お礼すら言えなくて、困ったように口を歪める。
息が詰まるようで、何かを発することが出来ない。
もう一度口を開くと、それを要さんので塞がれる。
「…っ!!」
見た目に気を使っているからか、私より潤っているような気がする。