第7章 愛
(豪華客船だ……………)
クリスマスディナークルーズと大きく書かれた看板の前で、初めて今日何につれてこられたか理解した。
小さい頃見た映画で見たきりの世界が現実になっていて、戸惑う。
「ど、どうしよ!?」
「あ?普通にしてろよ」
「ええ…!?私、テーブルマナーとか、ほとんどわからないですよ…?」
「適当でいいだろ、どうせ他のやつは見てないんだ」
「そ、そんなもんですか…?」
「ああ」
ビクビクしながら席に通され、なれないヒールに震えながら座った。
中にはオーケストラ団体が座っていて、優雅な音楽を奏でている。
やがて、ゆっくりと船が動き出したのか、汽笛が緩やかに響いた。
コースで料理が運ばれ、炭酸水がグラスに注がれる。
目の前の人は、相変わらず慣れた仕草で優雅に食事していた。
指先にまで気を遣われているのが、見ているだけでわかる。
見よう見まねでそうしようとナイフとフォークの握りかたから見直した。
「お、上手いじゃねえか」
「ほんと…!?」
ちょっと褒められたのが嬉しくて、聞き返してしまった。
恥ずかしい…、と慌てて冷静になる。
緊張しすぎてよくわからなかったけど、きっと、凄く美味しい料理だ。
音楽が一度止まり、客席に呼び掛けが始まる。
そしてまた、旋律が流れる。
「……ワルツ…」
私がそう呟くと、要さんが嬉しそうにニヤリと笑った。