第7章 愛
翌朝、連れてこられたのは、有名な港町のクリスマスマーケットだった。
海外風の露店が並び、キラキラとした飾りつけや食べ物を眺め、そこの名物のオムライスを食べる。
潮風が少し寒かったけど、おすすめのシナモンたっぷりのホットワインが芯から温めてくれる。
海を眺めながら、海外のお菓子を食べて、カモメに餌をあげて、いつもより距離近く話してくれる要さんに嬉しくて顔を緩めてしまったりした。
イルミネーションが灯る時間に、下町風のブランド街に連れてこられ、あまりの場違いに首を振った。
よく行くと言っていたお店に案内され、かちこちに固まっていると、店員さんにお店の奥に通された。
「ドレスコードあるから、適当になん着か試してくれ」
「…!!?」
(どれすこーど、って、何!?)
それはドラマや映画でよく聞くあれなのか、はたまた別の物が実はあるのか?
頭が混乱したまま、店員さんのおすすめされるがままに試しては要さんがチェックする。
「これなら、いいんじゃねえか?」
「…い、いんですか…?」
「今日はパーっと使ってやるっつっただろ?」
「……え!?いやいやいや!私なんかに…!」
「はあ?兎に角、これ。
あとこっちのアクセ」
「はい」
(まだ買うの…!!?)
「そのまま着てく」
「かしこまりました」
ほら、とすべてを着用させられて鏡の前に立たされた。
専属のメイクさんが少し化粧をしてくれて、まるで、自分とは思えない自分がそこにいる。
「……!」
痣が見えない。
服も、アクセサリーも、それで選んでくれていたらしい。
泣きそうになる。
せっかくのものが台無しにならないように、頑張って堪える。
「いいだろ?俺の見立て」
「……っ、はい、最高です……」
自信満々に言う要さんは、いつもよりずっとカッコよかった。