第6章 解
うちに着けば要さんが一人で練習していた。
何回でも思うけど、本当に芸術品だ。
ルーブル美術館に要さんが置いてあっても、私ならなんの違和感も覚えることなく、すごいなーと横を通りすぎてしまうと思う。
「要さん、た、ただいま」
一応声を掛けたが返事はなかった。
集中しているのかもしれない。
音を立てないように移動し、先にテスト勉強を始めた。
期末が終わったらどこか連れていってくれるらしい。
少し、やる気が出る。
「、風呂」
「…あ、はい!」
帰ってきてることに気付かれていた。
慌てて電源を入れて軽く掃除をする。
お風呂が一緒なのは、住み始めてからずっと変わらない日課になってしまった。
意識してからとても抵抗あったけど、なれてしまった今は、少し恥ずかしいと思うくらい。
「痣、やっと消えたな」
「……そう、ですか?」
「なんだまだ気になるのか?」
「……他の人と、どうしても比べちゃいます…」
「……」
気にしなくていい、と何度も言ってくれたのに、私はどうしてもその言葉を飲み込めないでいた。
それはやっぱり、要さんがあまりにも綺麗だからだ。
私は、それに少しでも近付きたいと、どうしても、思ってしまって…。