第5章 紅
家に着いて、食品を冷蔵庫にしまっている間も、まとまらない考えが渦を巻いていく。
「今度はどーした?」
「…!!な、なんでも…」
「なんでもなくねーだろ」
作業を中断させられ、無理やり向き合うように立たされる。
(……っ、惨めっ……)
きゅっと唇を噛み、顔を見られないように俯く。
「おい、姿勢!!」
「ひゃいっ!」
自信なくてつい丸めてしまう背中を度々怒られていたが、今日も指摘されてしまった。
「言いたいことあるなら言えって。
イラつくんだよそういうの」
「ご、ごめんなさい……」
怒らせてしまった。
手が上げられそうで、怯えて身構えてしまう。
あの人のせいだ。
要さんはそんなことしないのはわかってても、染み付いた習慣だった。
「悪ぃ、言い過ぎた…」
それでも逃げられないようにするためか、がっちりと抑えられている。
「そ、その…、パートナーさんとは、恋人なんですか?」
「ああぁ?」
眉間に思いっきり皺が寄せられ、思いっきり睨まれた。
(やんきーだ…っ!!)
「てめぇ、同じ質問してみろ」
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「男女のお笑いコンビや、三人組の男女混合バンドが皆付き合ってるか?
ちげーだろ?」
「……は、はぁ……」
「そういうことだ」
「……はぁ…」
「納得したか?」
「あんな綺麗な人でも?」
「でも。」
いつもより怒気の含まれた低音で、そう返事された。
だから私の話もしたんだ、としっくりこなかったものが、漸く納得できた。