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【BRM】太陽と鼠【裏】

第3章 息


彼はぐっと私を引き寄せて、髪のにおいをかぐ。
「ちが!そうじゃなくて……わたし……」
「傷が治りゃ可愛い顔してんだ、大丈夫だろ?」
「……」
すっぽりと、その胸に抱きしめられる。
緊張で死にそうだ。
自分の息すら当たるのが申し訳なくて、ぐっと我慢する。
知らないうちに、どんどん惹かれてるんだ。
そんな、私なんて、隣にいることすら申し訳ないのに。
息が苦しくて、なんとかもがいて離れる。
「おい、どうした?」
離れてから、はー、と深呼吸する。
はっ、と気付いて慌てて玄関に向かう。
「…あ、おい…」
靴底からふやけたお金を取り出し、ちょっとだけドライヤーしてから渡しに行った。
「すす、すみません、いま、これしかなくて!!」
「は?」
「あっ、その、二回もお風呂借りてしまいましたし、こ、この前も、結局、何も出来ませんでしたから…!!
だから…!!」
矢継ぎ早に言いたいことを纏めもしないで、くるくると丸まりそうなお札を震える手で持つ。
「その、これで、勘弁していただけませんか……」
小声で、一番言いたいことを言ってしまった。
「いらねえ」
「んえっ!!?」
「駄賃って、じょーだんだ」
「うそっ!!!見返りもなしにこんなことしてるんですか!!?
もうこれ以上いい人でどうするんですか!?」
「そうでもねえだろ。
無理やり連れてきて無理やり抱こうとして…」
「と、とんでもないです!
だって……、ほんとに、助けて貰っちゃったから……」
顔が熱い。
見れば見るほど綺麗だ。
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