第3章 息
鞄に入ってた物が濡れてしまって、諦めてまた大きな服を借りた。
ぼんやりとベッドに沈んで、やっと全身に痛みが襲う。
「……うっ…」
「大丈夫か?」
「……だ、じょ…」
でも、これが、私への罰。
逃げてしまったから。
皮膚の表面が乾いたら、新しい絆創膏をしてくれる。
顔も、無理やり開かれた場所も、内臓も、痛い。
「どこ行くつもりだったんだ?」
ペットボトルを渡しながら、彼は聞いた。
「ど、どこも……」
「は?」
「兎に角、出なきゃって、必死で…」
「行くとこねーのに家出したのか?」
「……は、はい…」
一瞬だけ、ぎょっとした表情をされた。
でも、そうかもしれない。
普通は宛を見つけてから、出ていくものかもしれない。
でも、あの時は、兎に角出なきゃと思ってて。
そして、心のどこかで、この人に見つけてもらいたいと。
そう思っていた。
なんて、おこがましいんだろう。
なんて醜いんだ。
自己嫌悪でギリギリと拳を握る。
「日中はいねえけど、寝るに困ったらここにいればいいんじゃねえか?」
「え!!?」
「え、って…」
「ムリムリムリムリ!!
こ、こんな綺麗な場所、私には……」
「綺麗って、散らかりまくりなんだが」
「だ、だって、私、こんな、汚いから……」
「はあ?洗い足りなかったか?」