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夕立と花

第3章 もっと


まさか、だった。

向こうは振り向いていなかったので、気づいていないと思っていた。

急に声をかけられ、咄嗟に俺は謝る。

「あ、いや、すみません…」

「別に」

そう言うとその女の子はこっちを振り向く。

やっぱりあのときの。

「え、あ、そ、そのー…」

「なに」

「えっと、その、」

「うん」

そう言うとその女の子は立って、こっちに歩いてきた。

「何年生」

「お、俺は1年っす…」

急に話しかけられてから、ずっと緊張してしまっていた。

「そう」

「あ、えと、」

「私は3年」

「そうなんすね!」

先輩、か。

「えっと、昨日、先輩を見かけて…それで、会ってみたいなーと思って…」
「その、お名前…は…」

「潮野エリカ」

「!! エリカっていうんすね…!お、俺は、小鳥遊遊吾っす!その、エリカ先輩、よろしくお願いします!」

勇気を振り絞って言ったが、

「うん」

とだけ返される。

少し冷たいようにも感じたが、目的を果たし、俺はとても嬉しくなっていた。

「、美術部…なんすか?」

「ううん」
「暇つぶし」

そう言われ、よく見ると、さっき筆を走らせていたキャンバスには、何も描かれていなかった。

「描かないんすか…?」

「うん」

俺にはよく理解ができなかったが、それも芸術か何かなのかもしれないと思い、これ以上深く踏み込まなかった。

「白が好き」

先輩がぼそっと呟く。

「白っすか」

「うん」
「嫌い?」

「いえ、嫌いじゃないっすけど…」

「そっか」

なんだか不思議な感覚だった。

やっぱり美しい。
俺は魅了された。

もっと先輩を知りたい。

そんな気持ちから、先輩に明日も会いに来る、と約束をした。

すると先輩は「うん。」と返事をした。
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