第5章 意外
「…え?」
思わず驚いてしまう。
「なに」
「へっ、あ、いや、なんか、こう、先輩がこういうとこ来るなんて意外だなぁって」
「そう」
先輩はそう言って、ラーメン屋の扉を開ける。
ガララッ
「らっしゃい!」
ラーメン屋特有の威勢のいい挨拶だ。
先輩はスタスタと歩いて行き、そのままテーブルの席に着いた。
俺も慌てて席に着く。
俺はとりあえず醤油ラーメンを、先輩はスタミナラーメンを注文した。
…それにしても、驚きだ。まさかラーメン屋だとは。
「先輩、ラーメン好きなんすか?」
「うん」
「そーなんすね!美味いっすもんねー」
「うん」
先輩はラーメンが好き…と。
また1つ先輩のことを知って嬉しくなる。
「へへっ、俺 先輩のこと知れて嬉しいっす」
「そう」
俺はニコニコしながら先輩を見つめる。
やっぱり、美しいんだよなぁ…
先輩には、きらびやかって言葉が似合うなあ。
そんなことを考えていると、ラーメンが運ばれてきた。
「いただきます」
先輩が手を合わせて言ったので、
俺も続けて、
「いただきますっ」
と言う。
すると先輩は髪を耳にかけ、ラーメンを豪快にすする。
なんだかその姿は妖艶で、俺は思わず見惚れる。
「冷めるよ」
先輩にそう言われて、俺ははっとした。
しばらくして、ラーメンを食べ終わり、
「ごちそうさまでした」
と手を合わせて先輩が言った。
「帰る」
「は、はい!」
店を出て、すぐに先輩とは別れたが、先程のラーメンを食べる先輩の姿が頭から離れなかった。