第10章 Chime8
「なんかすみません、バタバタして」
「いえ…」
会話が途切れ気まずい空気が流れる
「えっと、リエーフと知り合いなんですか?」
「あ、ああ高校のときバレーで少し」
「そうなんですね」
どうしよう、この前の事もあって緊張するし会話が続かない
「灰羽、よく来るんですか?」
「あ、はい幼馴染なんでしょっちゅう泊まりに来ます」
「……幼馴染、か…」
「え?」
「…灰羽だって男ですよ。ちょっと警戒心なさすぎない?」
「えっと、」
少し声を低くした東峰さんの雰囲気に無意識に後ずさる
背中に壁の感触がしもう下がれないところまで来てしまったと気づくと包む様に頬に大きな手が触れる
そして親指でなぞるように一点を擦られ、そこがリエーフにキスされた場所だと気づくのとわたしの体が強い力に引き寄せられ逞しい腕に包まれるのは同時だった
「ほら、警戒心薄すぎます。…俺だって…男だよ」
「…東峰さんっ?」
「あんなに簡単に触らせないでよ」
体格差のせいもあり固く抱かれた腕の中では囁き声のような小さな声は聞こえない
「え、聞こえな…」
「連絡先、教えて下さい」
遮るように耳に入る声
「仕事で教えてはいけない決まりだけど、もっと名字さんの事が知りたい…この前だって本当は聞かれて嬉しかった」