第10章 Chime8
ドアをひらけばそこにはやはり先程思い浮かべた人物が想像していた通りの優しい笑顔で立っている
いつも通り指定の場所に運んでもらい、いつも通り少しの雑談を
今日はまだ配達が残っているようで余り長くは話せないようだ
それでは、と出て行く東峰さんの制服の裾を咄嗟に掴んでしまった
「…?、どうしました?」
「あ、えっと…連絡とか、聞いたら迷惑でしょうか、?」
「…すみません、お客様とは個人的なやり取りは禁止されてて…」
「っ、そうですよね!いきなり変な事言ってすみませんっ配達頑張って下さい!」
「えっ、あ…」
今の顔を見られたくなくて少し強引に送り出してしまった
明るく返したつもりだけどきっと不自然だっただろう
共通の知り合いがいたとしても、少しだけ仲良くなれたと思っていても東峰さんはお仕事でここに来ている
少し思い上がっていた自分に気づき恥ずかしくなった
玄関横に掛けてある姿見を見るとやっぱり笑いきれてない酷い顔のわたしがいた