第8章 Chime6
夕方になってきたリエーフはやはり悲しそうな顔をしていた
夕ごはん食べよっか、とリエーフを席に座らせおかずとおいなりさんをテーブルに並べる
それを泣きそうになりながらはぐはぐと食べ進めるリエーフが心配になり直接聞いてしまうことにした
「リエーフ、何かあったの?」
「…………」
「りえ、」
「名前さ、」
「?」
名前を呼ぼうとしたのを遮られるように声をあげたリエーフ
「好きな人、出来たでしょ」
「!」
好きな人、今そう言われて浮かんだのはやはり彼
この気持ちはやはり恋なのかもしれない
「う、うん…そうなのかな」
「…っ」
彼の事を考えて顔を赤くしていたわたしには、目の前のリエーフがどんな表情をしていたかなんて知る余裕もなかった
いきなりガタンと音をあげて立ち上がったリエーフに強く腕を引かれ彼の腕の中に閉じ込められる
状況を飲み込めないままひょいっと体を持ち上げられると少し強引にベットの上に抑えつけられた
「…!?」
理解が、出来ない
頭が追いつかない
目の前にいるのはリエーフで、でも違う人のようで
わたしの上から真っ直ぐに見つめる瞳は、まさに獅子のそれだった
リエーフはこんなに力が強かったっけ
こんなに大きかったっけ
慣れた筈の幼馴染に少し恐怖が湧き始めたとき、頬に冷たいものが落ちてきた
「リエーフ、?」
「ずっと前から…」
「…?」
「ずっとずっと俺は名前が好きだったよ」
「!?」
「それなのに、俺じゃダメなの…?」
好きと言われた衝撃よりも、捨てられた子猫みたいな悲しげな目から涙が溢れたのを見たときに胸が締め付けられるような痛みが走った