第2章 ハンカチ王子
すると廊下には薄っすらと煙が漂っている。
驚いていた私に口元にタオルを当てた上鳴君がぽんっと肩を叩いた。
上「なんか煙を出せる個性の奴に頼んだらしーぜ?」
『だとしたらこれは本物の煙ってことね。』
上「おう!」
切「お前が出した訳じゃねぇだろ。」
『うん、凄いドヤ顔。』
上「お前らさっきから辛辣な!?」
『さっき?』
上「あぁ、飯田にも突っ込んでたろ?」
貴/切『「…………。」』
上「いや覚えてねーのかよ!!」
喋って移動している間にもどんどん煙は濃くなる一方。
それに従い自然と口を開く者も少なくなっていく。
上「ん?どうしたの?」
私の顔を覗き込む上鳴君にふるふると首を振って答える。
一刻も早く校庭へ出なければ、分かってはいるのに早く足が動いてくれない。
それどころか煙をまともに吸い込んでいるせいで息苦しくて堪らない。
轟「ん。」
急に視界を塞がれ何事かと思い身を捩ると轟君から顔にタオルを押し付けられていることを理解した。
『えっと………私を誘拐でもするつもり?』
轟「そうしたいのは山々だが今は外に出ることが先決だろ。ほら、使え。」
差し出されたのは先ほど私の顔面に押し付けていた物。
轟君が別のハンカチで口を抑えているのを確認すると素直にそれを受け取った。
『ありがとう。よくハンカチ忘れたって気付いたね?』
轟「ん?いつも見ているからな。」
『………ちょっと待って。轟君への好感度を返して。』
轟「どうやって返すんだ?」
この天然め……。
軽く彼を睨めば頬を掻いたあと目を逸らされた。