第10章 クリスマス②
『爆豪がいいから大人しく着いてきてるんでしょ?少しは乙女心ってものを分かりなさい。』
爆「………いってぇ。」
『心が?』
爆「違ぇわ!!!ほっぺに決まってんだろ!!」
『爆豪の口からほっぺ出た!』
爆「俺だってほっぺぐらい言うわ!!」
『ふふっ!あはははは!』
爆「はっ。」
もやもやとしたものはとっくにどこかに飛んで行って、君の隣に居られればそれで良くて。
なのに遠回りしてしまうのはまだ若いから、と歳のせいにでもしておこう。
今はただ手に触れる温もりを固く固く握り締めた。
爆「いてぇわ!!!」
『あ、ごめん。つい。』
爆「おめぇはゴリラか。」
『で、そのゴリラとどこに行くつもりなの?』
爆「檻に返す。」
『………ってことは動物園?』
爆「いいから着いてこい。」
あれから電車に乗り爆豪がここだ、と言う頃には辺りはすっかり暗かった。
だが目の前は華やかなイルミネーション。
深い紺色の背景に映えてとても綺麗だ。
『……綺麗。』
爆「行くぞ。」
感動も束の間。
目の前の景色に見惚れていることなどお構いなし。
互いの熱ですっかり暖かくなった手を引かれ奥に進むと大きな観覧車が見える。
爆「ほら、乗れ。」
幸いほとんど順番待ちはなかった。
爽やかな係員の行ってらっしゃいませ!の声と共に観覧車は回り出す。
上から見下ろすイルミネーションはなんとも綺麗だ。
真向かいに座る彼のことも忘れうっとりとしていると、急に何かが重くのしかかる。