第5章 言葉足らず
漂ってくる良い香りに頬を綻ばせ箸を置くと不意に背後から両腕が伸びてきた。
爆「サボって何やっとんだ。」
『ご飯作ってるの。』
爆「見りゃ分かる。」
ならば何故聞いた?と彼に尋ねるのはご法度。
それよりも爆豪君が台に手をついたことで私に覆い被さって身動きが取れないことが気になる。
『あの………近すぎませんか。』
爆「黙ってろ。」
『えっ!?ちょっ……!!』
そのまま首筋に埋まるようにグリグリと頭を押し付けてきた。
一旦は驚いたものの心地の良い圧迫感にしばらく酔いしれていると急に彼が口を開く。
爆「飯。」
『クスッ。…………はいはい。』
目の前に並ぶはザ日本の朝食。
彼の口に合うかは知らないが私にはこれが限界だ。
爆/貴「『いただきます。』」
いつもは騒がしい朝食の時間も今日は二人きり。
今頃みんなはまだ夢の中だろう。
『うーん、ちょっとお味噌汁濃かったかな。』
爆「そんなことねぇ。」
『そう?てっきり口に合わなかったら残されるもんだと思ってた。』
爆「お前は俺を何だと思っとんだ。」
『スパダリ。』
爆「は?」
『褒め言葉。』
爆「………そうかよ。お前が作ったもんなら何だって食うわ。」
『そういうところだよ。』
たわいない会話をしながらご飯を食べ終えるとサッと爆豪君が私の分の食器まで下げてくれた。
慌ててキッチンへ向かうと、
爆「いいから大人しく座ってろ。」
なんてまたもやスパダリ発揮。