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エルヴィン裏作品集

第7章 あなたと共に




あの日より二ヶ月程時が流れた、嫁いでから二年目の月。ユリアの体に異変があった。

倦怠感と吐き気、嘔吐などの症状と、何より、ツキのものがパタリと来なくなったことで妊娠が確定した。

妊娠を告げると、夫や姑、従者達は大変驚いた。

わざわざ書面にしてしまったユリアの家への契約に姑も渋々と則り、ユリアの家は借金も無くなり、代わりに多額の金が贈られた。


ユリアはそれを見届けた日の次の夜。
同じ部屋で眠る夫に気付かれないようにある支度をしていた。

荷物は手にせず、身一つのみ。あるのは腹の子だけ。

ユリアは両親の元へ向かう為に、カルデリア家から逃げる支度だ。

月明かりのない地面へ足を進ませると、足首まで埋まるほどに雪が積もっていた。この雪の降り方なら、明け方には自分の足跡も消えるだろう。

ユリアは広い敷地を進みながらある男を想っていた。

その相手はエルヴィン。彼を最後に見たのは昨日だったか。脳裏にあるのは雪かきをする姿。あの日から結局一度も話さず、また他人のような過ごし方をした。

ユリアは込み上げそうになる涙を堪えながら雪の中を進んでいく。

そろそろ門の場所に近付いてくる。門の下の辺りにランプに火が灯されているようだが、それがゆらりと動いた。

人が居る。姑か。誰だ。まずい。今見つかるのはまずい。近付いてくる。

ユリアは雪かきされて積み上がった雪の山の後ろに隠れた。

吹雪いている訳では無いので、足音はしっかりと聞こえた。

雪山を挟んで、ユリアの背後で足音が止まった。


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