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エルヴィン裏作品集

第22章 【合同夢】Kids under Edge



「ほら、水だ」

エルヴィンが腕を伸ばし、ベッドサイドに置かれたミネラルウォーターのボトルを手に取って私に差し出す。
ありがとう、と伝えた声は酷く掠れていた。

「大分無理をさせたな……すまない」

声が出ない代わりに首を振る。
確かに無理をさせられたけど、私だってエルヴィンに無理をさせてしまった。それは揺るがない事実だけど謝らないで欲しかった。
元はと言えば、お互いに言葉が足りなかったことが一番の原因なのだから。

「俺は、お前のことになると冷静で居られないんだ」
「信頼していないわけじゃない。ただ、どうしようもなく不安になってしまうんだよ」
「お前の気が他に向いてしまうんではないかと、いつも気が気じゃない」

ボトルの口から少しずつ水を流し込んで喉を潤す間、エルヴィンが胸中を語ってくれた。
素直に嬉しかった。だって、そんな風に思っていたなんて知らなかったから。
いつだってエルヴィンは当たり前のように私の傍にいたし、私もエルヴィンの傍にいる。お互いにそれが自然な形になってしまっていて、壊れるなんて思いたくなかったけど、どこか現状に甘えている関係になっていたような気がする。
夫婦と言えど、必ずしも心変わりがないわけじゃない。
そんな単純で当たり前なことを、危機として認識されていたことが堪らなく嬉しかった。
エルヴィンの嫉妬心が心地いい。
だってその根幹は私への執着と、愛だから。

「エルヴィンの、知らなかった一面を知ることが出来て嬉しい」

叱られた子どものような顔をしていたエルヴィンにそう告げれば、驚き、次の瞬間には嬉しさの滲んだ笑顔を浮べた。

「俺もだ。俺の知らないお前に会えて良かった」

額、瞼、頬にキスを落とされる。
見つめ合って、お互いに少しだけはにかんで最後は唇に。
長く一緒に居ても、きっとまだまだお互いの知らない事もあるだろう。そのままでも添い遂げることは出来るかもしれない。
けれど、こうして距離が縮まるのなら、思い切って新しい自分を見てもらうのもいいかもしれない。
これからも、もっと貴方の事を教えてね。エルヴィン。


-第22章 Fin-
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