第7章 あなたと共に
“今夜”、と姑は言ったが、姑に連れられる前の時間は16時。今はまだ18時くらいだろうか。辺りも静かになり、かなり冷えてきた。涙は止まったが、震えが止まらない。
戸の真横、薄着、冬の夜。ユリアは最悪な条件の中でただ死を願った。このまま凍死すればいい、と。
ずっと真冬の庭で作業する厚着で軍手までしているエルヴィンはというと、きちんとユリアに言った通りに話しかける訳でもなく、時たま剪定で使う刃物を整備したり、物置小屋をウロウロして整頓していた。
ユリアはチラリとエルヴィンを見ると、丁度整理し終わったエルヴィンと目が合った。
ただ見つめるエルヴィン。ユリアは勝手に口が動いた。
「……寒い」
独り言のような呟き。しかしエルヴィンは自分の厚手の上着を脱いでユリアに掛けた。温められた上着で体温が少し上がる気がした。
「なな、なんの……つっ、つ、つもり」
寒さで震えながら話すと、エルヴィンは自分の方へユリアを引き寄せた。藁を背にして座り、横にはエルヴィンが居て、しっかりと肩を寄せられて摩られている。
「唇が紫になっている、気が付かなくて申し訳ございませんでした」
体の当たる場所が暖かく、上着も大きい為に徐々に震えが止まり始めた。
それと同時に、エルヴィンへの気持ちもゆっくりと優しいものになっていた。
元はと言えば、自分が巻き込んだようなものだ。姑が鍵を閉めたとはいえ、エルヴィンもまさか屋敷の主の、しかも関わりも全くない妻と二人で狭い物置小屋に閉じ込められるとは思ってもいなかっただろう。
ユリアはエルヴィンの上着を掴みながら、ポツリポツリと言葉を紡いだ。