第6章 歪んだ二人の向かう先
ユリアはサネスの腕を掴んだ。
「何だ?やめろとでも……」
サネスが言いながら振り向き、目に入ったのは明らかに様子のおかしいユリア。まるで性行為をしている最中のような……恍惚とした表情だった。
「お前……何なんだ」
「サネスさん……交代させて下さい」
その日からユリアは拷問の魅力に取り憑かれた。
普段は真面目で誠実な人間に 擬態 し、拷問を任されれば、待ってましたと趣向を凝らしたやり方で相手を追い詰めて聞きたいことを聞き出した。
その変態さは三兵団の上層部の人間のみがしる秘密。
人を人間扱いしない屈辱的なやり方、しかし確実なやり方に皆口を噤んだ。
この頃変わり行く壁内人類の歴史。サネスが突如消息不明になった。上に消されたのか何なのか。ただしユリアはどうでもよかった。
「……ユリアよ。お前に調査兵団団長、エルヴィン・スミスの尋問を頼みたい」
上官はユリアの顔色を伺いながらユリアに話を持ち掛けた。
「私なんかが……?」
「お前しかいないのだ」
その言葉に“頼りにしている”という主旨の意味はないだろう。
きっと、“手を汚し、それを快楽としている人物はお前しかいない。だからやれ”、という意味だ。
「分かりました。やりましょう」
ユリアは快諾した。緊張、そして同時に酷く興奮した。