第1章 秘事は睫
会場に来賓、来客が全て入ると、1階と2階で会場を総勢30名で警備し、会場外で20名が警備する様に配置した。
ユリアはもちろん、常に公爵の背後で辺りを見張る。
公爵が挨拶をし、乾杯の言葉を述べ、1度毒味をしたワインと毒の塗られていないグラスで公爵は無事に乾杯を終えた。
響く拍手にご満悦な公爵を見て、椅子に毒針が仕込まれていないことを確認して公爵に掛けてもらう。
そして始まった御祝いと称した媚び売りの時間が始まる。皆資産の運用や業務提携の話、とにかく公爵との関わりを持ちたい一心で必死に媚を売る。
「アルブレヒト公爵」
挨拶する者の最後の一人、エルヴィンがワインを片手に公爵に挨拶に来た。
「やっと来たかエルヴィン」
疲れた様子の公爵は、ユリア程ではないが割とエルヴィンを気に入っているようで、やっと来たお気に入りのエルヴィンに再び自ら握手を求めた。
公爵はこれでもかと愚痴を零し、エルヴィンはそれを黙って相槌を打ちながら聞いている。
「私ももっと早く公爵とお話が出来れば良かったのですが」
「いや、構わん。作り笑顔で顔面が言うことを聞かぬがお前になら気遣いはせずとも良いからな。そうだろう?」
「はい、仰る通りです。公爵」
気分よく話す公爵は、エルヴィンに横に座るように言ってワインを注ぎながらまた世間話をし始めた。
それを他の貴族は良い目では見ていなかったが、所詮は程度の低い地位だからかエルヴィンは気にもとめずに話し、地位の低くない貴族は臆することなく会話に入り、エルヴィンも含めて交流をしている。