第1章 秘事は睫
「各班、よろしくお願いします」
一班5名、それが10ほどあり、ユリアの号令で班の面々が等間隔で並び、来賓や来客のチェック、危険物持ち込みがないか、全ての確認を行っていく。
「やあユリア君。今日も凛々しいね。娘にも見習って欲しいよ」
「公爵!こちらには出られぬようにと部下がお伝えしたはずですが」
「いいや、来ていないぞ。君の部下はまた上手いこと怠けているようだな」
豪快に笑う公爵は、来賓と来客に握手しながら挨拶をしている。
公爵は爪を噛む癖があるせいで、手に毒を塗って握手をし、その手の爪を公爵が噛んだ際に毒を舐めさせて殺害しようと目論む者が出現して以来、会場に入る前に流水で手を洗い、ボディーチェックまで行うようになった。
それをクリアした者が今公爵と握手を交わしている。
その中に、兵服をまとった男・・・調査兵団団長のエルヴィン・スミスもおり、公爵の「娘を嫁に貰え」という、テンプレートなセリフをスマートに躱した彼は、1度ユリアと目を合わせて愛想無く会場へと入っていった。
護衛の対象でもあるエルヴィンの姿を確認し、会場入口付近の部下にサインを出す。エルヴィンの護衛に3名ほど割り振り、その部下のボディーチェックも抜けなく行った。
エルヴィンの後を3名の部下が続くのを見届けた後、公爵と共に会場へと入っていった。