第4章 性的趣向
八月もほぼ終わり。
1Kアパートの一室に一眼レフカメラのシャッター音が響いていた。
「ユリア、もっと・・・脚開いて・・・そう、綺麗だよ。尻も突き出すんだ・・・いいね、上手だ」
そう言ってエアコンの無い、扇風機だけが回る部屋で汗を流すエルヴィンを、同じく汗を流すユリアは四つん這いで上半身を床に付けたまま、尻を高く上げるポーズで盗み見る。
「(また勃ってる・・・)」
気付かれていないと思っているのか、エルヴィンはユリアの水着姿を撮影する際には必ず股間が膨れている。
それはユリアに対してでは無く、水着に対しての興奮であることは分かっていた。
二人はたまたま、性的趣向が一致しただけの仲。
ユリアは最近気が付いたが、水着を着る自分を見られることに、エルヴィンは水着を着る女性を見ることに性的に興奮する。
それ以上も以下もない。ただの趣味仲間のような仲。
親子に近い年の差はあるだろう。二人はひたすらに趣味の範囲内で互いの欲求を満たしていた。
そして冬になりかけたある日。
競泳水着を着たユリアは着替えに使っているユニットバスから出て、薄いコートを羽織って部屋に入ると、一眼レフカメラの液晶を見ながら既に股間を膨らませたエルヴィンが目に入った。
「エルヴィン、準備出来たよ」
「・・・ああ。その前に、ユリア、こっちに来て」
「うん」
するりとコートを脱がされ、ピッチリと水着が密着した身体が露出した。エルヴィンが息を呑む音が聞こえる。
「その・・・少し・・・触れても?」
初めてのことだった。あんなに触れることはしなかったエルヴィンが。ユリアは戸惑いながら「うん」とそれだけ返事をした。