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エルヴィン裏作品集

第1章 秘事は睫



ブリッツ・アルブレヒト公爵ー
彼とは2年ほど前、ユリアがまだ新兵の頃に出会った。その頃中央ではまだ幼い10歳から18歳までの少女の誘拐、殺害事件が多発し、難航する捜査に憲兵が手をこまねいていた。

アルブレヒト公爵の娘は当時10歳。ユリアより6歳下のお嬢様で、彼女もまた、誘拐された少女の一人であった。

そんな事件を解決に導いたのがユリアだった。


匙を投げた上官に言われるまま捜査を引き継いだユリアは、真夜中に行われる人身売買の会場を酒場の店員になり聞き出し、自ら競り会場に侵入。ちなみにその情報を漏らした男が幼児・少女殺害の犯人で競り会場に向かう際に襲われ、強姦される手前で拘束し、後に処刑。禁止されていた違法人身売買の会場も一気に摘発し、更には競りにかけられた公爵の娘を救出したとあり、憲兵団入団から僅か2年で二等兵から上等兵に昇進した。出世競争率の高い憲兵団でのスピード出世はユリアを有名にさせた。


その後、ユリアは公爵直々の願いで護衛を任されることが多くなり、誰が見ても分かる贔屓だということもあって、初めはユリアに嫌な顔をしていた上司もユリアの前では口を噤むようになった。


公爵はこの壁の中にいる貴族家でも指折りの資産家で上流社会のトップとも言える家の主だ。

兵団の者はこぞってゴマをすり、特に今、資金調達の為に調査兵団が彼を落としにかかっていると風の噂で聞いた。

そんな彼が一兵団の小娘を贔屓にしていると聞けば、皆がユリアに対して良い対応をするのは目に見えて分かり、ユリアは上司の対応の変わりようにも気持ちの悪さを覚える程だった。


だが、どれもこれもユリアにとってはどうでも良いことでナイルからも「表の顔だけでも、もう少し光栄に思うフリをしろ」と言われ、公爵に対しての言動がナイルの肝を冷やしてしまうことがあったが、それがまた公爵には新鮮で尚更気に入られた。





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