第21章 器の守護者
団長がペンを置いて、体をパキパキと鳴らす音が聞こえ、椅子が軋んだ。団長のずっしりしていて、だがしっかりとした足音が出口に向かう。出て行くのかと思ったが出入口の施錠をした。
何故鍵を?確かに団長の命を狙う者が居てもおかしくないが、調査兵団の団員がエルヴィン団長の殺害を目論む輩など……
そう考えていると、何やら重いものを動かす音がした。団長、一体何を──……。
次は、解錠と、軽い木のドアが開く音がした。団長室に、出入口以外の扉は無かったはず。隠し部屋か……?寝室にするなら隠す必要はない。
団長の足音が消えたところで、団長は部屋と思われる場所に消えたのが伺えた。
俺は戸棚から転げ落ち、ようやく開放される。痺れる前にマッサージして、部屋を見渡すと、いつもある重たそうな本棚がズレて、そこの裏側にある壁には、木の扉があった。
耳をすましてみれば、声がした。近付いてみる。よく聞けば、まだ未経験の俺が聞いたことがない、“オンナ”の声がしている。
運良く扉がきちんと閉まっておらず、光が差すそこから中を覗いた。
そこに見えたのは、エルヴィン団長と、その股で頭を上下に動かしている女。
「……ユリア」
……は?い、今……なんて?ユリアって言ったのか?
「ん、だんちょ……好き、」
「私も好きだよ」
顔を上げた女。その顔はよく見えなかったが、声も名前も、ユリア。