第21章 器の守護者
ある時期に行われた壁外調査から、俺の幼馴染が行方知らずになった。どうやら、巨人に食われたらしいが、納得いかない。
名前はユリア・カルデリア。
俺はユリアが好きだったが、彼女の並々ならぬエルヴィン団長への忠誠の心と、その裏にある恋心を知り、俺は一気に負けた気がして手を引いた……、出してさえいないが……。
俺はユリアへの恋心で、ユリアに会いたい一心で、独自に調査を行った。
周囲の人間からは、「そうやって、仲間の死を受け入れられないのも分かるが……」と憐れに思われたりしたが、俺は本気でユリアは死んでいない気がしていた。
根拠も確信もある。
今夜、とある場所に忍び込み、証拠を掴む。
俺が忍び込んだ場所は、団長室だった。
遣いで報告をしに団長室に入った時、微かにだが団長からユリアの匂いがした。
長年共に過した、家族のような俺達。
ユリアに過敏になった今は尚更分かる。
ユリアはエルヴィン団長といる。絶対に。
俺は息を潜めて、背の低い戸棚の中に隠れた。
ギリギリ入れたが、長時間いるのはキツそうだ。手足を最大に曲げ、その辺によく居る猫のような姿で息を潜める。
息を潜めて数時間が経過した。エルヴィン団長への訪問者は後を絶たなかったが、ようやく静かにペンを走らせる音だけが響くようになったのは夜も深まってきた頃だった。