第19章 林檎が落ちた
二人は落ち着いてからシャワーを浴びて、湯に浸かっていた。
エルヴィンに背を預けて、手で水鉄砲を作って誰もいない前側に湯を飛ばす。飛んで行った湯は湯船の湯とまた混ざる。
「……お父さん」
「何だ」
「後悔してるでしょ」
「何故だ」
「質問を質問で返したから今確信した。ごめんね。無理強いさせて」
エルヴィンを思えば謝るべきじゃ、無かった。
目が熱くなって、ぽたぽたと涙が溢れ出す。
「ごめんなさい、私……私出て行くから……っ」
ユリアが言うと、エルヴィンが後ろからゆっくりと抱き締めてきた。肩にはエルヴィンの頭がもたれかかって、その濡れた髪から雫が胸元を経由して湯船に消えた。
「……行かないでくれ。……頼む」
力が強まる。
「お前にまで行かれたら、俺は……生きている意味をどこに見い出せばいいか分からなくなる。……だから頼む、行くな、ユリア。愛してるんだ……本当に愛おしいんだ、ユリアが」
そう言いながら、背中に“異物”が存在を成す。
「……分かった。どこにも行かない。嫌になったって……離さないから。……お父さん」
ユリアは腰を上げて、再び“異物”を体内へと誘った。