第16章 君が知らないこと
「っ……」
ユリアがエルヴィンと住み始めてひと月したある日。
ちゅぷ、ちゅぱっ、とエアコンの取り付けられた部屋では小さな音が聞こえる。エルヴィンの膝の上でユリアは跨り、エルヴィンに抱き締められたままで大人しく唇を吸われている。
「あぁ……柔らかいね。若いって良いな」
「髭痛い」
「昨日剃っただろ」
反論させる間もなくキスを再開させた。
跨った時、ユリアの股にゴリゴリと何かが当たる。
「(ちんちん勃ってる)」
ユリアはチクチク当たる髭に顔をしかめながらも、口の中に侵入してきた舌に身体を仰け反らせた。
「っちょっと!?」
「ユリアちゃん、これはやって当たり前なんだよ。みんなしてる。今、君の同級生も彼氏や彼女が出来て、皆こんなお子ちゃまなキスだけじゃなくて、セックスもしてるぞ?ユリアちゃん遅れてるなぁ」
「嘘……」
「本当。俺も実際、初めては14歳だったからな」
「やば……」
「まあでもセックスは止めような。嫌だろう?」
ぎゅ、ぎゅっと強く抱き締められた。
ユリアはその度股に当たるモノを感じて、何だか下腹部が切なくなった。
もう一度、エルヴィンが唇を吸って、舌がまた入ってきたが今度は受け入れた。
同級生は、みんなしてる、当たり前のことだから。
いつか幸せなことがしてみたいと考えていた。
それは彼氏が出来たり、結婚したり、子供が産まれて、毎日笑って、楽しい人生を送ること。
当たり前をユリアは、手に入れたかった。
「……おじさん、」
「ん?」
「……セックス、しよ」