第15章 消失
車庫に車が止まった。
ユリアに一晩中電話したが繋がらなかった。電源が入っていない、そう言われるだけ。
初めはリヴァイについて聞きたい事があって連絡した。リヴァイは実家に預けたのは知っている。だが泊まりだとは知らなかった。何故かと知りたくて電話したが一回も出なかった。
いつまでも折り返しがない、おかしい、絶対に。
俺は玄関で二人を待った。ドアが開いた。
そこには、“女と男”の顔をした妻と息子が立っていた。
こんな時に、鼻が利かなければ良かったのに、と思う。
二人にはお互いのいやらしい匂いがまとわりついていた。
ユリアを見れば、不安からか目が泳いだ。
次にエルヴィンを見れば、何食わぬ顔をしていた。
こうなるのは必然的だった、と。当然だと言う顔で。
俺の中の何かが切れた。ユリアの細い腕を掴み、靴のままで寝室まで引っ張り入れた。力無く床に投げ出された体に胸が痛くなる。だが今は……
寝室の扉を閉め、物置にしている棚をズラしてユリアを閉じ込めた。直ぐにヤツの元へ向かう。
「っエルヴィン!!」
廊下を進み、リビングに居たエルヴィンに勢いのまま拳を奮った。ゴッ、と拳が側頭部に入る。
流石の図体は、よろけはするが倒れない。睨んだまま見つめる目に向かって再び拳を打つ。
まともに入り、エルヴィンが床に尻を着く。
すかさず馬乗りになって鼻血を垂らすエルヴィンの胸ぐらを掴んだ。
「アイツは俺の女だぞ!!仮にも息子であるお前が手を出していい女じゃない!!」
表情一つ変えない。その顔に更に腹が立つ。
胸ぐらを掴んだまままた頬を殴る。
息を荒くしていると、エルヴィンが漸く口を開いた。