第15章 消失
それから時はあっという間に過ぎた。ユリアの腹にいる俺の分身のお陰でエルヴィンはただの子ども、ただの兄貴として過ごしていた。
やはり妊婦をどうこうするような非道さまではないらしい。
しかし今日は12月25日。気を抜くな。すぐに出産が
「っミケ……!!破水した……!!!」
「……はっ!?」
破水後にあっという間に陣痛、あっという間に子宮口も全開、医師や助産師も驚くスピード安産で俺の二人目の愛の結晶(一応奴も俺の子)が産まれた。
両サイドを俺とエルヴィンに固められ、俺達は手に爪を食い込まされたまま。初め産声が上がらなかったが、処置を始めてすぐに産声が分娩室に響いた。
それを聞いてユリアも俺も泣いた。
「可愛い声だ」
「っうん」
何年も前に見た光景をデジャブらせながら、俺は助産師の腕からユリアの腕に渡された新たな命を見た。
有り得ない、は有り得ない。
エルヴィンと目が合った。この顔、まだ産まれたてだが知っている。
「可愛い……」
幸せそうに鼻先を指で撫でるユリア。助産師に「授乳してみますか?」と聞かれて早速授乳していた。調べたが今やっていることは母性に関する良い事らしい。
弱々しく必死に乳を吸う我が子。脳裏には前世の記憶がチラついている。
髪はユリアの血を継いだ黒髪なのだろう。細い目は俺に似たのだろう。小さな鼻はユリアに似て、白い肌は俺達どちらかだ……
「ミケ、名前、どうしよっか。候補あったじゃん?ミケに決めて欲しい」
頭が真っ白になる。
「……リヴァイ……」
ああ、エルヴィン分かってる。そんな目で見るな。
「いい名前だ。ね、母さん」
「うん?うん、あれ?新しく名前考えてたんだ?」
「……ああ、この名前が急に降りてきた」
「エルヴィンの時も言ってたよソレ」
我が家にまたひとつ厄介な事が増えたかもしれない。
未然に防げる厄介な事は少ない。無事に出産を終えたユリアと子ども。まだ処置の残る第二子・リヴァイは別室に行き、俺達もユリアの処置がある為に分娩室の外に出た。
「血迷ったか、ミケ」
「俺の存在は何だ、前世の同志召喚機か……?まさかアイツも記憶戻るんじゃ……」
黙ったエルヴィンは俺の問い全てへの返事で「かもな」と言って笑った。