第15章 消失
冬ももうすぐ終わり。春の足音はもうすぐそこまでやって来ている。
私は今日、片付けをしながらミケとエルヴィンの帰宅を待っていた。
エルヴィンの高校受験も終わって、上手く行けば、四月から晴れて高校生という訳。電話があるまで、ただただ信じて待つ。
そう、今日はエルヴィンの高校受験の合格発表の日。
私は緊張で時たま吐き気をもよおしながらスマートフォンをソワソワと見たり触っていた。
突如鳴るスマートフォン。ミケだ。間を開けず出ると、テンションの高いミケがいつもより早口で告げた。
「受かってる!エルヴィンが合格してる!信じられない……!あの倍率をアイツは……!今日はうんと美味い飯を用意しておいてくれ!!」
「……っは、うん!!」
息が止まるかと思った。涙が出た。ミケは電話を切る直前、「さすが俺達の子だ」って言った。凄い、凄いよエルヴィン。やっぱりパパに似て賢い子だ。今日は腕を奮って、盛大にお祝いをしよう。
合格発表の後、用事を済ませて夕方頃に帰宅したエルヴィンを抱き締めると、エルヴィンも抱き締め返してくれた。エルヴィン越しにミケを見て腕を伸ばすと、遠慮がちに近付いてエルヴィンを挟む形でみんなで抱き締め合った。
それから私達は、出来たての夕食の香りが漂うリビングに入って、みんなで夕食の支度をしてご馳走を囲った。