第15章 消失
エルヴィンの誕生日から、初めての休日。
俺の休みとエルヴィンの休みは同じ、土日が休みだ。
リビングでゲームに興じるユリアとエルヴィン。明らかにエルヴィンがおかしい。何故って奴はユリアの膝を枕にしてゲームしている。ユリアは何も気にせずゲーム。エルヴィンが勝ってばかりのゲームに不満を言いつつも、エルヴィンが「もう一度やろう」と言えば了承する。かれこれ二時間弱、エルヴィンに“見せ付けられている”。
「エルヴィン、ちょっと足痺れちゃった、休憩」
「さっきもそう言って逃げただろ?」
「本当だってば、ちょっとミケ、代わって!」
「あ、ああ……分かった」
ユリアと交代すると、愛想良くするエルヴィン。目の奥は笑っていない。敵意を出しすぎだ。ユリアにバレるぞ……まあ鈍感だから中々勘づかないだろうが。
ゲーム中にユリアが退席する。ひたすら無言でゲームをするが、エルヴィンから口を開いた。
「まさか俺の名前を“エルヴィン”にするとはな」
「ああ、他にいい名前が浮かばなかっただけだ。勘違いするな」
「まだ何も言っていないだろう。それにしてもユリアは相変わらずいい女だ」
胸の奥がザワザワとする。
「……お前、やめろよ」
「何を?」
「間違っても母親に手を出すなよ、息子」
敢えて“肩書き”で呼ぶ。立場を分からせる為だ。
今、ユリアの男は俺なのだから。お前は息子であって、ユリアは俺の女で妻なんだ。変な気は起こすな。
そういう意味を込めて。
「はは、随分な勘繰りだな。出た杭は打つタイプだったか?もしくは未だ健在の鼻が何か察知したか」
「ふん、面倒事が嫌いなだけだ」
テレビに映る俺のキャラクターがエルヴィンのキャラクターを画面の端に殴り飛ばした。画面には大きく“KO”と表示される。
悪いがエルヴィン。今世ではお前の負けだ。
大人しく指でもくわえて見ていろ。
ユリアが戻ると互いに勝負の勝敗にリアクションしながら、ユリアが出してきた菓子を食べて三人で再び試合をした。