第12章 ごめんなさい。②
スッと足をエルヴィンの指先が撫ぜる。
「ミケも俺も怒ってるぞ?」
エルヴィンの言葉にミケが離れる。
「ど、して……ですか」
「それは自分で考えろ」
ユリアの問いにミケが冷たく言った。
体重の掛けられた腕に、ユリアはこれから起こるであろう痴態を考えながら膝を擦り合わせた。
ユリアはミケに足を曲げるように言われ、その通りにした。
すると少しどこかへ行っていたエルヴィンが足元に現れ、手に何かを持っている。茶色の縄。あからさまな厭らしさに釘付けになる。
「少し面白い話がある。俺はこの職に就いて十年になるんだがある特技があるのに気が付いた」
頭元にミケが来て、その足を枕にしながらユリアは膝を持たれてエルヴィンに向け、開脚しながら話を聞く。
「どうやら縛るのが得意らしい」
「へ……」
え?あのトラック内で動かないように固定されたやつ?確かにギチギチに固定されていて安心感はあったがまさかアレの事を言っているのか?
ユリアは意味が分からない。
エルヴィンがベッドに上がって縄を手元でビッと張った。
「引越し屋になってまさか縄を縛るのが特技になるなんて面白いと思わないか?」
「ちょ……と、分かんないかもです」
ユリアの返事を聞き流してエルヴィンは続けた。
「因みにこの縄は俺が鞣したから縄自体は痛くない。手間を掛けたんだ、君を想いながらな」
なめす?とユリアが言えばエルヴィンが工程を説明し始めた。縄の煮沸、脱水、乾燥、馬油を染み込ませ、毛羽立つ縄の表面をコンロで焼き、焼いた後に焼きカスを拭き取ったら完成。
口では簡単だが実際掛かった時間はこの会わなかった時間ほぼ使う程。
「変態……ですね」
エルヴィンが片足に縄を押し当てて縛り始めた。
「これくらい普通だよ。みんなやってる」
まるでイケナイものを勧めるような口振りで答えるエルヴィンによって、足に縄が少し食い込みながら縛られていく。それをユリアは疼く下半身を感じながら見守った。