第11章 契約者
ユリアは契約についての説明をした。取引で嘘はつかない。それが決まり。
主に取引に方法は二つ。願いへの対価として、“魂の讓渡”、または軽度の願いならば“身体の結び付き”を要すること。書面の契約書も書くことがあるが、これはもちろん対価には含まない。
そう説明しながらユリアは願いを問う。ユリアはエルヴィンが「両親と会わせろ」というと考えていた。
死者を生き返らせることは出来ない。その代わりにエルヴィンの死後に両親に会わせてやり、対価として魂を頂こうとしていた。
しかし彼は、父の仮説を証明することの手伝いをしろ、そう言った。その為に自分の魂を差し出す、と。
「夢半ばで死ぬようなことがあっても、魂は頂く。それでも構わないの?」
「……いいよ。必ず父の仮説を証明してみせる。必ず」
そう返事をしたエルヴィンの瞳には、子供とは思えぬ強い意志が燃えていた。
ユリアはそれに小さく身震いをして、契約書を渡した。
小さな背が、床に置かれた紙に名前を書いていく。そして手渡された契約書を確認すると、それは手元から燃えた。
「……契約は成立した。これからよろしく、エルヴィン」
ユリアは手を差し出す。エルヴィンはそれをまた凝視して、魔法陣から出て握手をした。
そうして幼いエルヴィン少年と、悪魔のユリアの関係は成立した。