第9章 夫婦の在り方
次の日。
眠れず、日々やつれてくエルヴィンだったが、仕事は変わらずこなしていくよう心掛けていた。
家事は……失敗ばかりだが洗濯機が使えるようになった。
米は洗剤で洗ってはいけないし、野菜は水洗いした方がいい。ユリアは凄いな……と手元にあるボロボロの野菜たちを鍋に入れて、カレーを作ってみたこともあった。食器は何枚か駄目にした。
今までユリアに家を任せっきりで何もしてこなかったエルヴィンは、どこに何があるのかもサッパリで新しく買ったものも多々。そういった面でもエルヴィンは支えをなくしかけていた。
エルヴィンが憔悴していくが時間は過ぎていくばかり。ユリアは健康そうで、なにより……幸せそうだ。
諦めるつもりはないが、彼女が帰ってくるのか不安になり始めた頃。
ある会社に会議で集まった時だった。
会議室に社員と入ると目の前に居たのは、画面で見ていたあの男だった。
一気に顔に熱が上がり始める。掌は拳を作り、力強く握って震えている。
リヴァイと一瞬目が合うが逸らされた。
アイツだ。アイツが……俺の女を……。
殴り掛かりたい気持ちを抑え、会議が始まってもジッとリヴァイを監視するように見た。会議の内容もバッチリ話出来たが、それが終わったのかも分からぬまま怒りや嫉妬が止まらずにリヴァイを睨み続ける。
会議が終わり、相手の会社の者に調教師のリヴァイだと思われる人物の名前を聞いた。
「……リヴァイ・アッカーマン、それが彼の名か」
「はい、何かご要件でも?」
「いや、前にプライベートでお会いしたんだが名前を聞きそびれてしまってね。ありがとう、助かったよ」
リヴァイ・アッカーマン。リヴァイは本名だったのか。
喫煙室に向かうリヴァイの後を続き、一緒に喫煙室へ入った。暫く禁煙しているタバコ。タバコを切らしたフリをしてリヴァイに声を掛けた。