第9章 夫婦の在り方
エルヴィンが忘年会からのホテルに宿泊した次の日。帰宅してポストを見ると大きな茶封筒が突っ込まれていた。中には……DVD?らしきものが入っている。
それを手にしてエレベーターを上がり、部屋の鍵を開けて入る。そこでエルヴィンはいつもの「おかえり」が無いのと、部屋が真っ暗のまま、夕食のいい香りもしない異様な雰囲気に気が付いた。
「ユリア」
ネクタイを緩めながら部屋を進み、リビングに入るがユリアは居ない。寝室、バスルーム、有る部屋全てを探すが居なかった。こんな事は結婚して初めての事で、焦りが出た。しかし彼女もいい歳だ、幼い子供でもないしこの時間なら外出も有りうるだろう。
しかし彼女が連絡もなしに……エルヴィンは何の気なしに先程持って上がった茶封筒を開けた。その中身に目を見張る。
ゆっくりと取り出した用紙。それはユリアの署名と捺印がされた 離婚届 だった。
その離婚届にクリップでメモ用紙がとめられている。
“DVDを観てから、書くかどうか決めて下さい”
ユリアの文字で書かれたそれ。DVDを手にしてプレイヤーにセットし、再生ボタンを押した。
映し出されたのはユリア。余所行きの格好をしている。