第10章 風 邪 っ ぴ き に ご 用 心
あれからゼリーを食べて、風邪薬を飲んだ。
一郎くんと電話をしていた時より身体が軽くなった気がするけど、やっぱりまだ怠くて熱もありそう…寒気もするし。
毛布に包まりながらぼーっとしていれば、いきなり一郎くんにお姫様抱っこをされる。
『うわっ…ちょ、一郎くんっ』
一郎「薬飲んだし、もう横になれ。早く寝た方が良くなるのも早いだろ」
そういうとお姫様抱っこしたまま寝室へと連れて行かれ、ベッドに優しく降ろされる。
お姫様抱っことか…恥ずかしすぎて顔から火が出そうなんだけど…!
なんだかまた熱が上がった気がした。
ベッドに横になれば、一郎くんが布団を掛けてくれた。
一郎「俺のことは気にせず寝ちまえ」
『でも…』
一郎「俺は適当に帰るから気にすんな」
帰るという言葉になぜだか心細く感じてしまう。
まだ一郎くんと一緒に居たい…なんて思ってしまうが風邪薬を飲んだせいか段々と眠気が襲ってくる。
『一郎くん…』
一郎「ん?どうした?」
『少しだけ…手、握ってもいい?』
一郎「手…か?別にいいけどよ…」
一郎くんは頬を赤らめながらも手を差し出してくれる。
私はその手をとって握った。
手を握るだけでも人間こんなにも気分が落ち着くんだなぁ…と思いながら目を閉じれば、一郎くんの大きな手が私の手を握り返してくれる。
一郎「…おやすみ、名前」
そのまま一郎くんに頭を撫でられれば、私は睡魔に襲われそのまま深い眠りに入っていった。