第10章 風 邪 っ ぴ き に ご 用 心
あれから気持ちが落ち着きご飯も食べずにうとうとしていれば、家のインターフォンが鳴った。
『……はっ、誰だろう…』
眠い身体を起こして玄関に行きドアを開ければ、そこにはいるはずのない一郎くんが立っていた。
『…えっ?一郎…くん!?』
一郎「よ。…体調悪いって聞いて心配で来ちまった」
思いがけない訪問に、私の眠気は何処かに吹き飛んだ。
『わざわざ来てくれたの…?』
一郎「俺が勝手に来ただけだから気にすんな。あ、コンビニで軽く食べれそうなものと風邪薬買ってきたから良ければ」
コンビニに寄ったからと手に持つビニール袋を私に見せてくる一郎くん。
わざわざイケブクロから来てくれたと聞いて、私は嬉しさが込み上げて少し泣きそうになった。
『一郎くん……ありがとうぉぉぉお……!!!』
嬉しさのあまり私は一郎くんに飛び付きぎゅっと抱きしめた。
そんな私を抱きとめてくれる一郎くんがとても愛おしく思えた。
一郎「気にすんなって。…つーか、お前すげぇ熱じゃね?」
『はは…なんか今回酷くなっちゃったみたいで…って、ごめんね!一郎くんに移しちゃうと申し訳ないから…』
私はそっと一郎くんから離れる。
移したくはないけどこのまま一郎くんを返すのは残酷過ぎるから、少しだけお茶でも飲んでいってもらおうと思い私は一郎くんを部屋に招く。
『良かったら寄っていって、何もないけど!』
一郎「なら邪魔して、名前の看病でもしてやるよ」
『そんなのしなくて大丈夫だよっ』
気を遣わないでと言わんばかりに言葉を投げかければ、私たちは部屋に入った。