第10章 風 邪 っ ぴ き に ご 用 心
なんだかんだ時間が過ぎてあたりも暗くなってきた。
『もう夕暮れですね〜』
事務所の窓から外を眺める。
都会の街並みが見えて街灯がつき始める。
左馬刻「お前はもう帰っていいぞ」
『えっ?でも…今日特に働いてないんですけど…』
そんな私の話などシカトして、左馬刻さんはどこかに電話をかけだした。
左馬刻「俺だ。名前のこと送っていけや」
誰に電話してるんだろう…。
てか送ってもらわなくても一人で帰れるのに…道さえ迷わなければ……
そんなこと考えていれば左馬刻さんは電話を切った。
左馬刻「今迎えを寄越したから少し待ってろ」
『私ひとりで帰れますよ?』
左馬刻「方向音痴が何言ってんだ」
『べ、別に方向音痴なんかじゃ…!』
ま、まぁ…迷わず行けることは少ないけど…。
方向音痴だと図星をつかれてしまえば流石の私も返す言葉もない。
地図の勉強しよう…なんて考えていれば事務所のドアが開いた。
銃兎「迎えに来ました」
入ってきたのは入間さんだった。
『入間さん!朝ぶりです!』
入間「はぁ、呑気ですね。貴女が方向音痴が故に私がこうして駆り出されているんですよ?こっちの身にもなってください」
『なんだかんだ来てくれる入間さん女神ですね?』
入間「誰が女神だ、しょっぴくぞ。さ、早く行きますよ」
入間さんは呆れたように事務所を出て車に乗り込んだ。
『あ、左馬刻さん…お先に失礼します』
左馬刻「おう。気ぃつけて帰れ」
私は左馬刻さんに手を振って事務所を出た。
そして入間さんが待っている車の助手席に乗り込む
『入間さんお待たせしました!よろしくお願いしますっ』
入間「元気ですね…。じゃあ行きます」
私を乗せた車はゆっくりと走り出した。