第6章 初 出 勤 は 波 乱
あれから、失敗もせずに無事に仕事を終えた
幻太郎に言われたことを配慮してキスマーク的なアレに絆創膏を貼っておいたけど…正解だったかもしれない
高収入なだけに結構ハードな仕事だなぁ…なんて思いながら帰る支度を済ませた
『お疲れ様でした』
仕事仲間に一言告げれば私は店から出た
終電なんてとっくに終わってるし、始発を待つ方が早いかもしれない時間帯だけど…とりあえず家に帰りたいから私はタクシーを呼んだ
店の近くでタクシーを待っていれば、何かがチラッと視界に映った
……ん?なんかあそこに誰か倒れてるような…
そう思い私は倒れてる人にそっと近付いてみた
『……あの、大丈夫ですか……?』
そう声をかければ、その人はピクっと動いた
?「……は、腹が……」
『…は、腹?どうかしたんですか…?』
?「は、腹が減った……動けねぇ……」
……………腹が減って動けない人なんて私は初めて見たよ…?何かの童話かな?
このまま放置したらヤバそうだし…とりあえず何か食べさせる?……とは言っても…コンビニまで買いに行ったらタクシー乗り過ごしそうだしなぁ……
『あの…一緒にタクシー乗れます?』
?「た、タクシー?」
『コンビニで何か買ってあげてもいいんですけど、今タクシー呼んじゃって…今日こそは自宅に帰りたいんですよ私…だから何か食べるなら家でご馳走しますけど…どうします?』
?「!…行く!!!」
ご飯をご馳走すると言えば、突然起き上がり食い気味に目をキラキラさせた
『そ、そう?じゃあ一緒に…』
?「おう!どこの誰だか知んねぇけど、ありがとな!」
どこの誰だか分からない男を自宅に連れて帰る私って……でも見殺しに出来ないし…しょうがないよね…
?「俺は有栖川帝統!お前は?」
『え、あ、私は苗字名前』
帝統「へぇ、名前か!俺のことは適当に呼んでくれよな!」
ニッと犬っぽい人懐きの良さそうな笑顔でこちらを見てくる帝統
悪い子ではなさそう、と一瞬でわかる
そんな他愛のない話をしていれば、あっという間にタクシーが来た