第6章 初 出 勤 は 波 乱
は?こいつは何を言ってるの?
私、乱数くんをシブヤまで送り届けるなんて無理だよ?
友達なんだから責任もって連れて帰ってもらいたいんだけど!?
『ちょ、待って待って待って!乱数くんも一緒に連れて帰って!』
幻太郎「だって起きないじゃないですか…面倒です」
『いや、面倒って…!こちらとしてもお持ち帰りしてもらわないと困ります!』
幻太郎「え?お持ち帰りして…と。随分と大胆なんですね…貴女は」
私じゃねぇよおぉぉぉぉお!!!
乱数くんをお持ち帰りしてって言ってるの…!!
ダメだ…日本語も通じないらしい……
『はぁ…もう疲れた……』
幻太郎「大丈夫ですか?無理は禁物ですよ?」
いや、この疲労は完全にお前のせいだから…
そんなことを考えていれば、幻太郎さんは乱数くんの腕を自分の肩に回し乱数くんを抱えた
幻太郎「じゃあ、お仕事頑張ってくださいね。今日の所は帰ります」
『え?あ、ありがとうございました…』
幻太郎さんは乱数くんを抱えたまま、乱数くんの財布から支払いを済ませれば出口に向かった
すると、オーナーから声をかけられた
オーナー「名前ちゃん、お見送りしてあげて」
『あ、は、はい!』
私は言われた通り乱数くん達の後を追いかけた
『幻太郎さん!』
名前を呼べば、振り返る幻太郎さん
私が来たことに不思議そうな表情を浮かべた
幻太郎「?どうしたんですか?」
『えっと、お見送りを…!』
幻太郎「あぁ、ありがとうございます」
店前に止まっていたタクシーに乱数くんを乗せれば、幻太郎さんは私の方を向いた
幻太郎「その首にあるキスマーク、隠しておいた方がいいですよ?酔った客に欲情されてしまうかもしれません」
『へ?あ、いや、これは…!』
幻太郎「後、幻太郎と呼んでください。それじゃ、冷え込むので風邪ひかないように」
そう言い残せば、幻太郎さんはタクシーに乗り込み乱数くんと帰ってしまった
何も考えてないようで、結構よく見てるんだな…幻太郎さん…じゃなくて幻太郎
キスマークなのか知らないけど、絆創膏でも貼っておこうかな…
そう考えながら私は店へと戻った