第2章 キスまでは、あと少し
不安げな瞳で見つめてくる鉄朗くん。
全部私の心が弱いせいなのに…
何でそんなに優しいの…?
「違う、違うよ!鉄朗くんは悪くないの。鉄朗くんの言葉や態度で不安になったことなんて、一度もない!」
ただ、私が卑屈なだけ…。
鉄朗くんの周りにはいつも誰かがいて、頼られてて、みんなに平等で優しくて…。
「鉄朗くん、モテるんだもん…」
「…え?」
「しかもバレーで全国大会出場してるし、しかも主将だし、しかも背高くてモデルみたいで大人っぽくてイケメンでかっこいいし。誰にでも変わらない態度で優しいし、親切で…。
私、釣り合わない気がして自分に自信なくなったりするんだよ…。でもこんなこと言うのウザいってわかるから…」
ここ最近ずっと胸につかえていたことを、思わず涙と一緒に吐き出してしまう。
言っちゃったら鉄朗くん、絶対困る。
だから自分の中だけに留めとこうって決めてたのに…。
もう本当に…何やってるの、私…。
「俺は小雪のこと、マジで好きだよ」
頭の上から響いてきたのは、私を諭してくれるみたいな柔らかい声。
引き寄せられるように顔を上げてみれば、声以上に優しい瞳とぶつかった。
「初めて会った時から、ずっと好きだった。スゲー優しくて可愛くて、明るくて思いやりがあってさ。今日なんて怒って帰ったっていいくらいのことしたのに、怒るどころか俺の体の心配までしてくれて。
そういうとこ、全部全部、めちゃくちゃ好きだから」
「……うん」
鉄朗くんの言葉は、まるで魔法の呪文みたい。
私の中のモヤモヤが、スーッと晴れていく。
「それと。小雪は俺のこと、誰にでも変わらないなんて言うけどさ…。ほら…」
グッと強く抱き締められ、広い胸元に耳が押し付けられた。
「…すごい。ドキドキ、してる…」
ドクドクと早い速度で打っている、心臓の音。
「してるよ。小雪にだけだから。俺がこんな風になっちゃうの。だから自分が特別だってこと、ちゃんとわかってちょうだいよ」
「うん…。鉄朗くん、大好き… 」
「俺も、大好き。小雪」
私の心ごと抱き締めてくれる、大切な人。
その大きな体を、私からも両手いっぱい抱き締めた。