第2章 キスまでは、あと少し
*夢主side*
鉄朗くんが来ない…。
待ち合わせの時間を勘違いしてしまったのかとLINEを遡ってみたけど、確かに11時で間違いない。
もうすぐ1時になっちゃう。
電話には出ないし、メッセージの既読もつかない。
どうしたんだろう…。
まさか、事故にでも遭ったんじゃ…!
それかもしかして…
私、フラれちゃった…?
嫌なことばかりが頭を過る。
昨日、鉄朗くんの気に障るようなこと言っちゃった…とか…?
ううん、だからって約束すっぽかすような人じゃないよね?違う…よね?
じゃあやっぱりここに来る途中で、事故とか急病とか大変なことに……
どうしよう…!
鉄朗くんに何か遭ったら…!
瞳にジワリと涙が滲む。
その時……
「小雪ーっ!!」
私を呼ぶ鉄朗くんの声。
声のした方へ目を向けると、全速力で走ってくる姿が映る。
駆け寄ってきてくれた鉄朗くんは、私の顔を見るなりガバッと大きく頭を下げた。
「はぁっ、はぁっ…、小雪、ほんっとうにごめん!!」
「鉄朗く…」
「ほんっとごめんな!誕生日のデートに遅刻するなんて…しかも連絡もしねぇで…、
……小雪?」
来てくれた…。
額に汗を滲ませて、肩で呼吸を繰り返す鉄朗くん。
具合が悪いわけじゃなさそうだし、こんなに一生懸命走ってきてくれたってことは…
私の勘違いだと思って、いいんだよね…?
「よかったぁ、来てくれて…。病気とか事故とかじゃないかって、しんぱい、してたの…っ、それに…、わたし、もしかして、振られ、ちゃった、…のかな、って…」
やっと会えた鉄朗くんの姿に安心して、涙がどんどん溢れてくる。
「小雪…ごめん、本当にごめん…!不安にさせちゃったよな…」
鉄朗くんの腕が伸びてきて、そっと私を抱き寄せてくれる。
頭を撫でていく大きな手があったかくて優しくて嬉しいのに、一度流れてしまった涙はなかなか止まってくれない。
「二時間も待たせちゃって、ごめんな、本当…」
「ううん…」
「それとさ、今、もう一個謝んなきゃいけない気がしてて…」
「…な、に…?」
「俺…もしかして気持ちの伝え方、足りなかったかな。振られた、なんて小雪に思わせちゃうほど、"好き" が足んなかった…?」